この映画のターゲットってどんな層なんだろう??
見終わって、ふと考えてしまった。
配給会社の狙いはたぶんアラフィフ世代かと。
そして私は50代の主婦の方にお勧めしたいです。
映画レビューは数あれど、このブログではアラフィフ主婦目線で作品を斬っていきます!
ハウスオブグッチ~表と裏の観かた
「ハウスオブグッチ」は人気のハイブランド「GUCCI」の創業者一族の崩壊を描いた映画です。
巨匠リドリー・スコット監督が、なぜファッションブランド映画なんだろう??と、不思議でしたが、映画を観て納得!
グッチ家の人々の人間模様を上手く描いていました!
ちなみに、リドリー・スコット監督は「エイリアン」や「ブレードランナー」をはじめ、松田優作の遺作でもある日米合作「ブラックレイン」などの監督で、私たち世代に馴染みのある作品を多く手掛けています。
私的、表の観かた
同名の小説が原作となっていて、グッチ家の光と影の実話を単純に楽しめる作品です。
「GUCCI」という華やかなブランドイメージとはかけ離れた、生々しいストーリーに引き込まれました。
家族経営だったことも知らなかったし、
世界中の女性を魅了するブランドであり続けるために、裏でこんなにも衝撃的な出来事があったなんて、全く知りませんでした。
そして、俳優陣が豪華!
主演はレディー・ガガ(マウリツィオ・グッチの妻)
アダム・ドライバー(マウリツィオ・グッチ)
アル・パチーノ(マウリツィオ・グッチの叔父)
ジェレミー・アイアンズ(マウリツィオ・グッチの父)
ジャレッド・レト(マウリツィオ・グッチのいとこ)
アダム・ドライバー演じるマウリツィオ・グッチが「GUCCI」の3代目社長ですが、社長になるまでの道のりと、社長になってからの顛末までが描かれています。
また劇中での衣装は、GUCCIの全面協力だそうで、当時の貴重な品々を提供されているようです。
俳優陣の競演も見どころだし、表の観方としてはラグジュアリーなブランドで目の保養をしつつ、「本当にこんな事があったの??すごいね!」と単純に作品を楽む!これに尽きると思います。
ちなみに原作小説の日本語訳は絶版になっていたようですが、今回の映画化に合わせて、再販されたようです。
私的、裏の観かた
もう、嫌になるほどドロドロして生々しい一族の内紛を見るに尽きます!
こっちの方がむしろ「表」かもしれません。
グッチ家メンバーのいい面も良くない面も描かれているので、ある意味ドキュメンタリー的な感じで楽しむことができると思います。
一言で片づけるなら「規模が大きな家族ゲンカ」とも言えるし、私なんて「だから家族経営って駄目なんだよね」と思っちゃった。
家族経営の難しさや事業継承って、どの時代もどの国でも、どんな規模でも未だに難しい問題だと思うんです。
それに加えて、企業としての成長も常に考えていかなければならないのは、かなりハードルが高いはず。
日本だって企業の7~8割が中小企業だと言われていて、このご時世で経営が難しいところも増えただろうし、家族経営している企業も少なくないと思います。
こういった観かたは、ある程度の経験や年齢を重ねたアラフィフ以上の世代ならではだと思います。
だから、物語の背景にある「ブランドの看板」の大きさについても考えちゃう。
私が世間知らずなだけかもしれませんが、今やハイブランドも自分の一枚看板で勝負している訳ではなくて、大手グループ企業の傘下に入って盤石な経営が約束されているんですね。
今のGUCCIは「ケリング(KERING)」という有名企業グループの中にあります。
このケリングって、なんとバレンシアガ(BALENCIAGA)、ブシュロン(BOUCHERON)、サンローラン (SAINT LAURENT)、ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)をはじめ、私たち世代なら知ってるハイブランドが連なってるのね。
ハウスオブグッチを50代主婦にお勧めする理由3つ
この映画の紹介がアラフィフ世代をターゲットにした女性誌に多く掲載されていることからも、50代女性がメインターゲットなんだろうな、と思っています。
そこで、私の視点で、50代主婦にお勧めな理由を3つ挙げさせていただきます。
お勧め理由1.ハイブランド全盛期を知ってる世代だから
アラフィフ~アラカン世代って、バブルの全盛期を経験している世代ですよね。
大学生が普通にハイブランドのバッグや財布を持っていた時代です。
私は20代の頃にハイブランドの品を持ったことはなかったけど、私のようにブランド全盛期を知っている世代は、この映画で描かれている世界的なブランド人気の温度感にすぐ馴染めて、作品の世界に没入できるような気がしています。
この辺りの温度感は、今の若い世代だと伝わりにくいのかもしれませんね。
お勧め理由2.親子の物語であり、夫婦の物語でもある
一族の内紛を描いた映画ではあるけど、父と息子の物語でもあり、妻と夫の物語でもあると思います。
息子も成長して大人になりますし、親も老いていきますよね。
いつまでも同じ力関係やバランスを保てる訳でもなく、時間と共に変化する距離感を体感できるなぁ、と思いました。
同じように、夫婦関係も年月が経てば、ふたりの関係性を見つめるタイミングもあるはずで。。。
だから、50代主婦にこそ観てほしいと思いました。
お勧め理由3.相続について軽く考えられる
相続が発生するような場面で「何を優先したいのか」を軽く考える機会になるのでは?、と思いました。
欲しいもの、優先したいものが、お金などの資産なのか、家族との関係なのか、自己認証、自由など、その人の本質が垣間見えるのが相続の場面です。
一般人とは桁違いの相続が発生することで、本作はある意味悲劇にも繋がっていきますが、この様子を胸に留めつつ、自分を振り返るきっかけにもなるかもしれません。
ハウスオブグッチを観る前に知っておくと嬉しい予備知識
この映画には賛否両論の声があるようで、否定的な意見としては、小説「ハウスオブグッチ」をかなり割愛している部分がある、との事でした。
たぶん、時代や人物像を深く掘り下げることが映画だと難しかったのかもしれませんね。
なので、映画では描かれていない予備知識を簡単に2つご紹介します。
経営者兄弟の人柄やGUCCIとの関わり方の違い
映画では2代目経営者の兄弟がGUCCIの株式を50%づつ保有しているんです。
アル・パチーノ演じる弟(マウリツィオ・グッチの叔父)は、20代の頃から父の元で働き、職人や従業員を大切にし、皮の見立てなども行い、若い頃から経営に携わってきたようです。
GUCCIの海外展開にも積極的で、ブランドの成長を考え、後進の育成にも熱心だったとか。
劇中では、息子をないがしろにしている感じでしたが、息子の為に香水事業を展開した、という話もあります。
それに対して、ジェレミー・アイアンズ演じる兄(マウリツィオ・グッチの父)は若い頃は俳優として、自分のやりたい事を謳歌していたよう。
しかし俳優業を引退した後は、そのコネクションを使って、映画の小物にGUCCIを起用してもらったり、ハリウッド女優にGUCCIを持たせたりすることで、ブランドイメージや広告に貢献していました。
グッチ婦人の原点
映画でも描かれているように、レディー・ガガ演じる(マウリツィオ・グッチの妻)グッチ婦人の実家はトラック運送会社です。
でも、彼女の幼少期に両親は離婚していて、12歳の時に母親が再婚したのが劇中で描かれているお父さんだそう。
このお父さんがとても良い方で、彼女はとても可愛がられて育ちましたが、それまでは母子で苦労して生活してきたようです。
そう聞くと、彼女がトラック会社の経理部でキッチリ仕事をしていたことにも納得です!
ハウスオブグッチ~私の感想
グッチ一族の衝撃の実話を単純に楽しめました!
これだけブログで記事として書けたのだから、私の胸に響いた作品ではあると思うんですが。。。
でも、全ての登場人物に好感が持てない映画でした。
夫に感想を聞かれて、私の第一声が「誰にもなりたくない」と言ったほどです。
リドリー・スコット監督は人物を描くのがお上手だからなのか、良くも悪くも人間臭い映画だったと思います。
それぞれの登場人物の良い面も良くない面も描かれてたから、それぞれの人の良くない面に私自身を重ねて観てたのかもしれません。
でも、ガガの演技はとても良かったです!
見事にグッチ婦人になりきっっていたと思います。迫力と貫禄もありました。
どうやら、この映画の為にイタリア語なまりの英語が話せるよう半年以上レッスンを受けたよう。
主演女優でアカデミー賞にノミネートはされるんじゃないかな、と期待しています。